大判例

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東京高等裁判所 昭和38年(う)894号 判決

被告人 入江やす

〔抄 録〕

控訴趣意第一点(事実誤認を前提とする法令違反の主張)について。

しかし、公職選挙法第一三八条第二項の規定により禁止される行為の第二は、選挙運動のため、戸別に、特定候補者の氏名もしくは政党その他の政治団体の名称を言いあるく行為である。投票依頼を直接の目的として候補者の氏名、または政党の名称を戸別に連呼する行為はもちろん、候補者の著書の販売、または政党への加入勧誘を目的として、付随的に候補者の氏名、もしくは政党その他の政治団体の名称を言いあるくような場合もそれが選挙運動のための行為であると認められる場合においては、本項の規定により戸別訪問とみなされて禁止される。原判決の認定した事実によれば、「被告人は、昭和三七年七月一日施行の参議院議員選挙に際し、全国区から立候補した山高しげりの選挙運動者であるが、同候補者に当選を得しめる目的で、同年六月二二日同選挙区の選挙人である原判示杉山きくほか六名方を戸別に訪問し、同人らに対し法の禁止を免れる行為として、「舌代、来る六月二三日午前一〇時から一〇時半までに山高しげり先生が本町を訪問することになつているから、多数誘い合い街頭で出迎えをされたい」旨印刷した文書を一戸につき四枚ないし四〇枚づつ合計一七四枚を手交して頒布し、もつて、それぞれ右特定候補者山高しげりの氏名を言いあるいた」というのであつて、右事実は、被告人において、山高しげり候補者に当選を得しめる目的で、法の禁止を免れる文書を配布することを認識していた点をも含めて、原判決挙示の証拠により十分認めることができる。そして、選挙運動者である被告人が、選挙運動の期間中に、原判示のごとき文書を頒布すれば、右文書には、所論のように「山高候補のために投票されたい」旨の表示がなされていなかつたとしても、右文書の配布を受けた人達においては、暗に山高しげりが原判示の選挙に立候補していることを知り、かつ同人のために投票をしてもらいたい旨をも推認することができるものと解するを相当とする。されば、原判決が、被告人の本件所為を公職選挙法第一四六条第一項の脱法文書の頒布罪と同法第一三八条第二項の戸別訪問罪に問擬したのは正当であつて、同判決には、所論のような事実誤認や違法は存しないから、論旨は理由がない。

(小林健 遠藤 吉川)

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